小説2

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9才の翔太は雪がちらつく寒い日、街中にある大きな書店に向かっていた。彼の手には、子供にとってはそこそこ大金の400円が握りしめられていた。めったにはないが、翔太は欲しいものがあると、手に入れなくてはいられなくなるような衝動が起こることがあった。少し前は、やはりその書店で売られていたカード型のルーペだった。薄く透きとおったカード型のルーペはなぜか翔太の心をつかんで離さなかった。今日の目的は、三菱鉛筆のシャープペンの芯を買うことで手に入る、麺の消しゴムが入っているカップ麺のおもちゃだった。これは芯を買った際にひくことができるくじの景品としてしか手に入らないもので、翔太にとっては宝物のように見えた。単なるおもちゃの消しゴムだが、そのデザインは細部まで実際のカップ麺を再現していて、翔太は心からそれを心から愛しく思った。

田舎町だったが、その書店はレンガ建築で、重厚で銀行のような権威を感じさせている。その威容は商店街の中心であることを感じさせた。実際に書店は商店街の中心に位置していた。書店に到着すると、翔太はまっすぐに文房具コーナーへ向かった。店内の暖房が控えめだったのか、広い店内で暖房の効きが悪かったのか、少し寒い店内だった。彼は1階中央の高級ペンのショーケースのところに行った。そこでシャープペンの芯が売られているのだ。他社の芯と間違えないよう、慎重に芯を選び、シャープペンの芯を二個手に取り、すぐわきのレジに向かった。レジには銀行員のような昔風のOL服をきた優しそうなお姉さんが立っていた。

「この芯でくじをひけるのですよね」と翔太は一生懸命勇気を振り絞って言い、シャープペンの芯を差し出した。

「ありがとう。くじを引いてね」とお姉さんは笑顔で言い、くじ箱を差し出した。

翔太は緊張しながらくじを引いた。緊張して焦っていたのか、選びもせず、上にある二つのくじを選んだ。くじを開けると「はずれ」の文字が見えた。彼はがっかりしながらもうひとつのくじをかくにんしたが、またしても「はずれ」だった。書店に来る前、だいたい当たるという噂を聞いていた、家族からも大丈夫当たるよと言われていた。

「残念だったね」とお姉さんは優しく言った。翔太はうつむき、なにも答えずにじっとしていた。

「でも、今日は特別におもちゃを一つ選んで持って行っていいよ。」

翔太は驚いて顔を上げた。「いいんですか?」

お姉さんは何も言わずに微笑んだ。

翔太はどん底からパアーと世界が明るくなるように感じた。嬉しくて嬉しくお姉さんにいうべきだった感謝のことばも言い忘れてしまった。箱には全種類ではなかったが、お気に入りのカップ麺の消しゴムが入っている。彼は実際に食べたことがワンタンメンのカップ麺を選んだ。

「これにします」と翔太は嬉しそうに言った。

お姉さんは「どうぞ」と翔太の喜びとは反対に淡々と事務的にそれを渡した。

翔太はおもちゃを大事にコートのポケットにいれ、書店を後にした。外はまだ雪が降っていたが、彼の心は温かかった。自分の手に入れた宝物が、彼の心を満たしていた。

家に帰る道すがら、何度もポケットから消しゴムを取り出しては確認し、家に向かった。家に帰った後、一部始終を家族に話した後、お姉さんにお礼を言わなかったことを母に少し注意された。

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